08.家は記憶でもある

家は記憶でもある

  〜大黒柱に思い出を刻む〜

家は、家族の絆をつくり、記憶として残る。
背比べをした 柱のキズ 柱のキズや 古時計 古時計や。
おばあちゃん おばあちゃんが坐っていた 木の椅子 木の椅子だとか、
そんなことが、家族の歴史をつくる。
ボディ&リフィルの家は、
さっぱりしていいけど、
家族の記憶を失いたくない。
カタチになるものを見つけよう。

幼い頃の記憶と、これからつくられる記憶

女性詩人の石垣りんさんに、こんな詩があります。
「家は古い 死んだ母親が住んでいる。どの新しいと呼ばれる家庭にも 母親がひとり。働き者で 料理好きで掃除好きで 洗濯好きで(中略)うっかりしているとみんな片付けられて その辺りがせいせいしている」。詩の題名は「母の顔」。母の存在を愛惜であると同時に、酷薄であることを、この詩人は見逃しませんでした。

人の記憶を削いでしまうのが現代の家です。Hシリーズは、改造が容易で、「かしこい家の建て方」ですが、家は、その家族にとって記憶装置でもあります。この家の合理性は、利点であると同時に難点です。自然のある生活、季節の旬のある生活を大切にしながら、意識的に、モノやカタチを通じて、家族の記憶を遺すようにすると、家族の歴史が繋がって行きます。

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