できるだけ自然のチカラで快適に
〜無理はしないけれど、活かせるものは活かす〜
green と wind と
古来、窓を開けると、風を呼び込める・風が通る家がいい家だといわれてきました。周囲の家の風道を読み、庭に緑を配し、お隣の庭の緑まで活かし、緑を通ってくる風の、今度は部屋の中に通り道をつくってあげます。
緑は蒸散効果が大きく、何枚もの葉の茂りが、夏の日差しを遮ってくれます。目にもうれしいのが緑です。
正面に見えるルーバーは、西日対策のための鎧戸。西日の灼け込みを遮りながら、隣地の緑を取り込みます。
風向・風速をデータから読み込んでプランする。季節と時間によって変わる風の流れをつかまえよう。
陽を入れる、日陰をつくる
太陽は、地域と季節、時間によって、位置が異なります。
冬は日差しを採り入れ、夏は遮りたいと誰しも思うことです。
しかし、日本列島は弓状に南北差が長く、北の宗谷岬と、南の与那国島ではまったく環境が異なります。気象データがよく整備されているので、それをもとに太陽の位置を調べ、建物の日影図を作って建物の軒や庇の長さを決めることができます。
これはとても大事な手続きで、これをしっかりやるかやらないかで、住まいの快適さ・エネルギー消費量がまるで違ってきます。
Hシリーズでは、日影図をシミュレーションして、1日の太陽と建物の関係を調べ、それに合わせて冬に日射を採り入れ、夏に遮蔽するようにしています。朝、太陽が顔を見せてから、夕陽が落ちて消えるまで、しっかり調べ、プランに反映します。
個々の建物に即していうと、周囲の建物の高さ調査を行うことです。建て込んだ街区での計画は、周囲のどういう高さで、どういう位置にあるかが大問題。どの位置に建物を配置すれば日が入るのか、隣接する土地の将来までも含めて見通さなければなりません。
茅葺屋根の知恵を活かす
昔の民家が涼しかったのは、茅葺の屋根
茅は、通気性に優れた材料です。空気をいっぱい含んだ材料ということです。その空気層が断熱に役割を果たしました。夏の日射を受けても、熱は茅の中に留まり、夜になると宇宙に放射冷却されるからです。
夏の屋根の表面温度は70℃
夏の日射を浴びた屋根の表面温度は60~70℃にも達します。小屋裏温度も50℃を超え、その熱が天井に伝わってじわじわと部屋の温度を上げます。茅葺の屋根は、この熱の部屋への到達時間を遅らせてくれました。
「木の繊維断熱材」という知恵
茅のような材を、現代の建材に求めて探し出したのが「木の繊維断熱材」です。
断熱性能は、他の優れた断熱材に劣らず、蓄熱容量・吸放湿性に優れた国産ウッドファイバーを使った断熱材です。
木の繊維断熱材は、熱容量が大きく、周囲の温度の影響を受けにくい特性を持っています。
断熱材の上面の温度変化が下面に到達するまでの時間を、200mm厚なら8時間、300mm厚なら13時間も遅延させることができるのです。
夜間の宇宙の絶対温度は、マイナス273℃です。昼間、太陽の日射が灼いた地表の熱は、夜間、宇宙空間に放出されて温度が低下します。この状態を放射冷却と呼びます。朝露は放射冷却によって起こる現象です。
室内に到達するのにこれだけの時間がかかるということは、到達する前に、屋根に籠った熱は宇宙に放射し、室内へはとどかないということです。
お日様の暖かさを室内に
太陽熱を室内に取り入れる工夫
冬の寒い時期は、窓からの日射熱をできるだけ取り込む設計の工夫はもちろん、空気集熱式ソーラー「びおソーラー」を利用しています。
びおソーラーは、屋根に載せた集熱パネルで、お日様の熱を集め、その熱を床下に送り、たいていどこの家にもある基礎のコンクリートに蓄熱して、その輻射熱で床を暖めるという、自然エネルギーを利用した暖房と換気のシステムです。
ファンを一つ動かすだけで、お日様の熱を室内に取り込むことができます。また、その空気は新鮮な外気です。
太陽熱の利用なので、太陽が顔を出さない日は集熱できませんし、地域にもよりますが、太陽熱だけで真冬の寒さを乗り切るのは難しいです。ですが、室内のベース温度を底上げし、室内の温度ムラをなくしてくれるので、他の暖房機器の省エネにもつながります。例えばエアコンを併用する場合でも、5℃→20℃にする場合と、10℃→20℃にする場合では、消費電力が大きく異なります。
また、夏は夜間に涼しい外気を取り入れる運転を行うため、窓を閉めたままでも、室温を外気温に近づけることができます。
金属屋根の場合、天気の良い日に放射冷却が起きると、屋根面の熱も奪われるため、外気よりも涼しい空気を取り込むことができる日もあります。
びおソーラーについて、詳しくはメーカー・手の物語のwebサイトをご覧ください。